救われたポプラ

岩見沢小学校のシンボルツリー(2001年)

 ポプラといえば北海道の風土の中で根付いた外来樹木のひとつです。北海道大学構内のポプラ並木は多くの人々に親しまれ、観光名所としてもよく知られていましたが、傷みが目立ち風前の灯火となっているは残念でなりません。

 

北大のポプラ並木北大のポプラ並木

北海道大学構内のポプラ(台風被害を受ける前)

 

 今年になって、構内では別の樹木伐採の是非を巡って大きな論争があり、新聞などのマスコミでも大きく取り上げられましたが、結局切り倒されたのです。報道によると腐朽によって幹の内部が空洞化しており、いつ倒れるか不安な状態で延命策は困難とのことで、この辺の判定基準の違いが、賛否の分かれ目になっていたようです。

 昨年の8月、岩見沢小学校の校庭に堂々とそびえていたシンボルツリーのポプラが、危険と理由で強剪定されました。枝枯れが激しく、時折それが落下してきたためで、生徒や通行人の安全を考えると当然の処置だったと思います。ただこの木は1935年(昭和10年)5月5日、当時の卒業生が記念に植樹したもので、その後の卒業生、先生、PTAの皆さんにとっても大切な財産でした。そうしたことから校長先生を始め、市当局の方、学校関係者の皆さんはたいへん苦慮されたそうです。

 診断を担当された樹木医の福士先生は、意外にも幹内部に空洞もなく健全な状態ではあるが、上部では枝枯れが進行しているので本来なら伐採すべき。しかし広く市民からも親しまれていることを考慮し10メートルほど切りつめるなどの処置を施してはとの所見をだされました。ポプラは命拾いしたのです。

 

岩見沢小学校のポプラ岩見沢小学校のポプラ

強剪定された岩見沢小学校のポプラ

 

 先生のお話によると、この種のポプラ*の寿命は一般的に60~70年といわれているので、樹齢が90年近い木が腐朽や空洞化していないというのは極めて珍しいそうです。そこで私たちが気になるのは、こうした処置の後どうなるのかではないでしょうか。次の写真をご覧下さい。札幌市内のある取引先の苗畑にある(写真右:推定樹高20m)ポプラは、12年ほど前に、大きくなりすぎて危険とのことから写真左のように強剪定したそうです。その後、新しい枝が成長し現在に至っていますが、この間でおよそ10メートルほど伸びたことと、剪定という更新により以前より樹勢が増したことに注目してください。

 

豊平区のポプラ豊平区のポプラ

強剪定した当時(聞き取りによる画像処理)と約12年後の姿(現状)(札幌市豊平区)

 

 樹齢や環境などが異なるとはいえ、10年後に岩小のポプラが再び立派な姿を取り戻すことを祈らずにいられません。おそらく植樹当時の大先輩たちは自分たちと将来の生徒が、素直で堂々とした人間に育つようこのポプラに託したのではないでしょうか。そうした思いを現在の私たちが大切に受け継いでいきたいものです。そのためには木が散々痛んでから大騒ぎするのではなく、常日頃から暖かく接していかなければと思います。

 また一連のポプラ騒動から私たちが学ばなければならないことは、「そこにあるから切らずに残す」ことではなく「そこにあるためにはどうすればよいのか」「どうすればそこにあり続けるのか」ではないでしょうか。

岩見沢小学校のポプラ諸元

その後(2002年、2005年)の様子はこちら