苗木の選び方

苗木を選ぶときのポイント

 最近は品数が豊富な大型園芸店と特定のアイテムに特化した園芸専門店などが相次いで誕生し、楽しみが増えたと同時に品定めにひと苦労する場面が多くなりました。自分の好みや目的にふさわしい苗木を選ぶ際にどういった点に気を付けると良いのでしょうか。

はじめに
自分の庭の環境を知る

 苗木を買い求める際には最も重要なポイントです。いくら品質の良い苗木を選んだとしても、環境に適さない種類を選んだのでは何もなりません。

産地を知る

 自分の庭の環境とかけ離れた産地の苗木を購入するときには注意が必要です。店頭で販売されているほとんどの苗木は本州産ですので、厳しい環境ほど適応性に欠けることがあります。また草花の場合はコストダウンを図るため道産品を含め温室で過度な促成栽培をされているものがあります。必ずしも価格だけに惑わされず品質にも目を向けましょう。

苗木購入のタイミング

 店先の苗木は特定の種類を除けば、本州方面で生産されたものがほとんどで、北海道の季節よりも先行した状態のものが売られています。晩霜の被害を受ける可能性があるというリスクと春先の防寒対策を考慮して買い求める姿勢も大切です。

お店の管理

 暖かくなると陳列している苗木の根が乾きやすくなったり、芽吹きとともに病害虫が発生することがあります。水やりや防除をきちんとしているかどうかは、買い求めた苗木の活着に大きな影響を及ぼします。

お店の対応とアドバイス

 店先には次々と新しい種類が登場していますが、必ずしも皆さんの庭には適さないものがあります。適切なアドバイスで私たちの不安を取り除いてくれたり環境に適した栽培管理について教えてくれる担当者がいるお店かどうかは大切なポイントになります。

良い苗木の条件

品質の良い苗木を選ぶには

 どうしても値札に目が行きますが、「安かろう悪かろう」では困りますね。さて店先に並んでいる苗木には大きく分けてふたつのタイプがあります。ビニールやプラスチック製の容器に入った「ポット苗木」と根鉢を麻(ジュート)製などの梱包資材で巻いた「根巻き苗木」です。それぞれ一長一短があり、善し悪しについては外見ではなかなか判断できないこともあります。

地上部と根とのバランスをみる

 持ち運びが楽だからといって地上部に比べ根鉢が異常に小さいものは避けた方が無難です。地温が上がりづらい北海道では発根のペースが落ちるためなおさらです。「良い苗木の第一歩は根から」始まります。

使われている用土にも目を向けよう

 根の良否が明暗を分けると行っても過言ではありません。その根にとって大切な用土が適切かどうかも大きなポイントになります。ところでポット苗木、根巻き苗木にかかわらず、生産・販売の都合で裸苗に土を詰め込んだものがあり、果樹苗のほとんどはこれに当たります。こうしたものは成育によい土を使っているわけではありませんので適期に購入し、すばやく植え付けることが肝要です。粘土やピートモス主体の土であれば取り除くほうが無難です。

苗木の姿、形をチェック

 過剰な施肥や水やりによって育てられた苗木は、環境の厳しい北海道では植え付け後の成育や越冬に傷害が出る場合があります。極端に徒長したもの、大きさの割には幹が細いもの(種類による差ではなく)が相当します。特に多くのポット苗木は過保護な管理で育てられてことを理解して下さい。

 コニファー、シャクナゲなどの常緑樹は、緑の少ない春先の北海道では目を引く存在です。色の鮮やかさは良い環境で育てられたという結果であり、必ずしも私たちの庭で健全に育つとは限りません。あくまでのその植物が持つ特性や性質を理解して購入しましょう。

病害虫の発生や痕跡を調べる

 春先はまだ芽吹きしていない苗木が多く発見することは難しいのですが、葉の裏に潜むハダニ、グンバイムシとその痕跡、幹や枝に付いているカイガラムシ、スス病は比較的容易に発見できます。新葉の先に付いたアブラムシもそうですが、そうした苗木を購入した場合は早めに防除してほかの植物に蔓延しないよう心がけましょう。周囲を飛び交うオンシツコナジラミなどは駆除が厄介ですのでこれの付着した苗木や鉢花は避けた方が賢明です。

そのほかに

 言うまでもありませんが、放任された環境で育った苗木や管理の良くない売店に置かれた苗木の場合、葉が黄変したり幹や枝に勢いがありません。当然、私たちが直接見ることが出来ない根の部分も傷んでいることが多いのです。また雑草やコケが繁茂していると庭にはびこることにもなりかねません。取り除いてから植え付けましょう。

 疑問があったらお店の人に尋ねることですが、お客さんが多い繁忙期はなかなか対応していただけないと思います。そうした日時を避けることも良い苗木を選ぶコツなのかもしれません。

(このページは「花新聞」(2003年5月)に掲載された当社の原稿に基づいています)